【第5回】平成医療改革31年史

【第5回】平成医療改革31年史

厚労省の上意下達の医療組織が必要では?

平成初期の頃、厚生労働省は健康保険制度を通じて、日本中の医療機関を統制するしかないのが現状でした。平成時代に行われた改革は、医療社会全体を厚労省の指導下に組み込むことを狙った諸改革といっても過言ではありません。新人医師の臨床研修システム、かかりつけ医・地域医療支援病院のシステムなど、いくつかの改革は緒に就きましたが、成果が表れるのはまだまだ先です。

悲しい医療社会の現実

厚労省からの医療機関に対する一元的な統制力の弱さは、新型コロナの流行で露見しました。
厚労大臣が一つの決断をしてそれを実現するには、医療機関が意のままに動いてくれなければいけません。しかし、思うように動いてくれないことがわかっていますので、何かを決断して発表しても、医療機関に知らん振りされた場合には、恥をかき、権威の失墜します。それを恐れるために、実行することを伴う決断をすることができません。だから、何もできない厚労省を演じ続けました。

厚労大臣が全国民のためを考えて一つの決断を下し、「それいけー」と全国の医療機関に命じても、医療機関はそれぞれの利害問題を押し立てて動いてくれないのです。大臣の命令が中心ではなく、各医療機関の都合が中心となってしまう悲しい医療社会の現実が、見られました。

全国141の病院ネットワーク

しかし、そんな中でも、厚労大臣の馬廻り衆といいますか、親衛隊といいますか、命令一下に動いてくれるはずの医療機関群が、ある程度は存在しなければいけません。それが、旧国立病院や旧国立療養所からなる独立行政法人国立病院機構に所属する141の病院です。「独立行政法人」になってしまいましたので、「親衛隊」「馬廻り衆」ではなくなっているかもしれませんが、その病院群の目標の一つは、次のようになっています。

国の医療政策への貢献

機構の人的・物的資源や病院ネットワークを最大限活用し、以下の取組を実施すること。 災害や新型インフルエンザ発生時など国の危機管理に際して求められる医療について、国や地域との連携の強化により、災害対応時の役割の明確化や災害医療現場等で貢献できる人材の育成、厚生労働省のDMAT事務局の体制強化など、国の災害医療体制の維持・発展への貢献を含め、中核的な役割を果たす機関としての機能を充実・強化すること。また、発災時に必要な医療を確実に提供すること。

「連携の強化」「維持・発展への貢献」と記載されているにとどまり、「厚労大臣の指示・命令を受けて」という文字が見当たりません。やはり、直轄組織ではなくなっているのです。

独立行政法人国立病院機構の前身である国立病院や国立療養所は、もともと陸軍病院や海軍病院で、傷病兵の療養所がGHQに接収されて、厚生省に与えられたものです。その気になれば、厚労大臣からの上意下達で動く医療機関群にすることも可能でした。
厚労省の直轄下であった国立病院や国立療養所を平成医療改革の中で独立行政法人としたのは、財政難の問題を解決するために、経営・運営の最大効率化を目指したからだと思いますが、馬廻り衆や親衛隊を少し遠ざけたことが、将来的に吉と出るか凶と出るかはわかりません。

国立病院機構病院一覧

独立行政法人国立病院機構の141個の病院は、こちらをご覧ください。http://www.medsalon.co.jp/list/5.html